11月23日、久しぶりのシアターオーブで観劇してきました。
映画が凄く有名な作品だと思いますが、実は鑑賞したことなく、完全に初見での観劇でございます。
笑えるシーンも少し涙腺に響くシーンもあって、今年の観劇納めにふさわしい演目でした。
それでは、次から感想になります。どうぞ!
登場人物
デロリス・ヴァン・カルティエ | 森公美子・朝夏まなと | 歌手を夢見る女性。ひょんなことから素性を偽り、修道院で生活することになる |
エディ・サウザー | 石井一孝・廣瀬友祐 | デロリスと同級生の刑事 |
カーティス・ジャクソン | 大澄賢也 | デロリスの愛人、ギャングのボス |
オハラ神父 | 太川陽介 | デロリスを匿うことになった修道院の神父 |
修道院長 | 鳳蘭 | デロリスを匿うことになった修道院の長 |
それでも、彼女たちは出会った
ところどころにコメディ要素があって、クスッと笑えるシーンが多いので忘れがちになりそうなんですけど、デロリスの最初置かれている状況って割と酷いよね、と見終わってから思いました。
歌手になりたいという夢をずっと真剣に追い求めているデロリスに対して、それをはぐらかしてばかりのカーティス。
一緒に歌っている仲間たちも、デロリスが歌手を夢見ていることを悪いとは言わないけれど、少し馬鹿にしたような雰囲気がある。
心配して否定している感じではなくて、「また言ってるよ……」という感じ。
ありきたりな言葉になってしまうけれど、誰一人として周りを信用していないように見えました。
それは別にデロリスに対してだけではなくて、他のどの人に対しても皆平等に信じていないし、逆に信じてもらってもいない。
環境的にそうなってしまうのは仕方ないのかもしれないけれど、お互いに利があるから一緒にいる、そんなイメージ。
だからこそ、デロリスにとってシスターたちの出会いというものは大きかった。
今までと真逆の、規則正しく、娯楽的なものは禁止されるという生活に最初こそ反発していたデロリスですが、シスターたちの中に溶け込むにつれて徐々に変わっていった。
デロリスに必要だったのは、今までの環境では全くなかった信頼。
相手を受け入れ、自分も相手に受け入れられるということ。
疑念ので生きてきて、気づかないうちに荒んでいたデロリスの心は、純粋で疑いを知らないシスターたちとの関わりによって徐々に溶けていく。
最初は(言葉では言い表せないくらい)下手だった聖歌隊の歌が、一緒に練習して素晴らしいコーラスが出来るようにまでなった。
歌が上手になったのは結果として現れたものだけど、その間の過程、誰かと一緒に何かを成し遂げること、その中でできた彼女たちとの関係性が何よりもデロリスにとって大切なことだったんだろうなあ。
誰か信じてもらえるって、本当に嬉しいことだもの。
主への信仰心もないただただ破天荒なデロリスを信じて受け入れてくれる人がいる。
一緒に生活をして、祈って、笑ってくれるシスターたちがいる。
一見、絶対に関わり合いを持たなさそうな両者だけど、それでも彼女たちは出会った。
最後に言っていたけど、神の思し召しかもしれないし、全て人が起こす行動によってそうなっただけなのかもしれない。
人生って、何が転機になるかもわからないし、転機だとしても、そう捉えることができるかどうかも分からない。
本当に不思議な巡りあわせですね。
デロリスとロバート、合わせ鏡のふたり
先ほどと似たようなお話になりますが、デロリスとシスターメアリーロバート、この二人はきっと対になる関係なんだろうな、と思っています。
何より、ロバートが歌う「私が生きなかった人生」に対して、デロリスが歌う「シスターアクト」がアンサーソング的なものに聴こえたのです。
夢を追いかけて、なかなか芽は出なくても自分の手で未来を切り開こうと一生懸命もがいてきたデロリス。
自分の気持ちにも気づかないまま、堕落と呼ばれるものを排除してシスター見習いとして過ごしてきたロバート。
ロバートの目にはデロリスはとっても輝いて見えていたんだと思う。
物怖じもせず、自分の気持ちをすっと言葉にできる。
言葉だけじゃない。デロリスの行動には何一つ嘘がない。彼女が思うがまま、素直に、躊躇いなく行動する。
自由に生きて、やりたいことが出来る環境にある私でも、デロリスはとっても魅力的で眩しく見えますから。
今まで教会で生活していたロバートには、それこそもう衝撃すぎたのではないかと思うのです。
いきなり現れた自分とは真逆の人間。
ロバートは彼女と出会って、怖いけど強い自分に変わろうと思うことが出来た。
そう思えたところから、もう既に彼女は変わり始めているのだと思わせてくれたのが「私が生きなかった人生」という曲です。
じゃあ、デロリスにとってはどうだったのだろう?
魅力的な主人公が他の登場人物に影響を与えて変えていく……そういう話じゃなくて、お互いに影響を与え合うからこそ、とても面白い。
デロリスはロバートたちに大きな変化をもたらしたけど、その先を見てみると、実は逆のことも言えて。
それどころか、実はロバートをはじめとしたシスターたちが、デロリスに与えた影響の方が大きいようにさえ見えてくる。
「私は伝説になる リプライズ」からの「シスターアクト」の流れがまさにそうで。
スポットライトを一身に浴びてクラブのスターになる、というかつて抱いていたはずの夢よりも、シスターたちと一緒に楽しく歌って輝く。その比重の方がいつの間にかデロリスの中で無意識に大きくなっていた。
そして、ロバートが歌う「私が生きてこなかった人生」でデロリスがロバートに投げかけた言葉。
「あなたが欲しい人生って何?」
ロバートに投げかけているようで、実はデロリス自身にも投げかけられていたこの言葉。
デロリスもその問いかけの答えを見つけることが出来た。
「みんなと一緒に歌えるなら輝ける」「皆が私の初めての仲間」
密かに寝室で聖書を読んでいたり、なんなら、その一節を聞いただけでどの部分か分かったり……。
少しずつ、彼女たちに感化されている兆しはあったのだけど、一人になってやっと自分の素直な気持ちに気づく。
あのシーンは本当に苦しさと嬉しさとが入り交じっているような感覚になりました。
今まで、他人から愛されるということを知らなかった彼女に、大らかな心で接してきたシスターたちの存在、そして何よりも「貴女のように生きたい」「あなたが人生というものを気づかせてくれた」と言ってくれたロバートの存在……。
デロリスとロバート、お互いを見て本当の自分を見つけていく二人の関係は、自然と涙が出るくらい素敵だったなあ。
それにしても、デロリスが修道院を出て行くときにロバートにあげたブーツを、最後ロバートがちゃんと履いてて、なんだかあったかい気持ちになりました。
その他感想
少し短いけれど、思ったこと・感じたことを箇条書きで書いていきます。
・悪役たち、なんだかアニーに出てくる悪役たちを思い出させる。こちらは人殺しもしているのに不思議。
・毛皮のコート、本当に小さすぎて思わず笑ってしまった。それ、袖を無くしたところで、絶対に着られないと思う。
・修道院長は真剣なんだろうけど、とってもギャグセンスが高いなと思うのは私だけ?「その誓いは取り消しました」とか。
・出て行った後のデロリスの枕元に聖書を発見して驚く修道院長、いいな。
・あの懺悔の部屋?相談窓口?のシーンとても好きです。
・修道院の目の前にバーがあるのって普通なの?
・シスターたちにとって、初めて(?)の外の世界がバーなのも面白いけど、そこに入っての言葉が「プロテスタントみた~い!」なの笑った。シスターにしか言えない反応だ……。
・最後、エディが入ってくるタイミングかっこよすぎて惚れる。
・しかもとどめの言葉が、今まで散々言われてきた「汗」っていう。
・結局、あのバーでデロリスコスプレ(?)してた男性は何者だったんだろう。気になりすぎる。
・聖歌隊のレッスンが始まってから初めての歌唱披露で、完璧に聖歌を歌ったかと思えば、次の瞬間ロックの始まりのように「ワンツースリーフォー!」ってリズムカウント入るの楽しいな。
・そりゃあ修道院長も!?!?!?!?ってなる。
・私は今回が初見なのですが、最後のローマ法王はいつもあの方がやっておられるのですか?いきなり下から現れてびっくりしました。
おわりに
さて、少し早くはありますが、2023年の観劇はこれにて終了です。
今年の観劇をすごく楽しくて、愛や思いやりに溢れているこの演目で納めることができて、本当に良かったです。
今まで何回も公演を重ねている演目でも、見たことないものもたくさんありますので、これからもたくさんの世界を見つけていきたいなと、思っています。
2024年もまた、新しい発見がある観劇ライフを送る予定ですので、皆様どうぞお付き合いくださいませ。
それでは!
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