こんにちは、macaronです。
身内に借りた本の感想シリーズ第2弾!(初回は住野よる先生の「また、同じ夢を見ていた」)
なんと1年、「同志少女よ、敵を撃て」振りの読書感想です。
作中で描かれる「言葉」というものについて、たくさん胸を打たれ、そしてたくさん考えた作品でした。
次から感想になります。
それでは、どうぞ!
登場人物&あらすじ
登場人物
・二ノ宮 こと葉:老舗製菓会社トウタカの社員。後にスピーチライターとしての道を選択する。
・久遠 久美:こと葉の師匠となるスピーチライター。政治スピーチの原稿などを手がける。
・今川 厚志:こと葉の幼なじみ。広告代理店に勤めるが、父の遺志を継ぎ政治家の道を進む。
・和田 日間足:広告代理店に勤めるコピーライター。
あらすじ
お気楽なOL、二ノ宮こと葉は、密かに片思いしていた幼なじみ・今川厚志の結婚披露宴で、すばらしいスピーチに出会い、思わず感動、涙する。
伝説のスピーチライター・久遠久美の祝辞だった。
衝撃を受けたこと葉は、久美に弟子入り、「言葉」の修行を始める。成長したこと葉は、父の遺志を継いで初めて衆議院選に立つ、厚志の選挙を手伝うことになるが……!?
人と人とを結び合う言葉の限りない可能性をハートフルに描いた青春小説。
「本日は、お日柄もよく」 あらすじより
感想
言葉を届けるということ
このお話はスピーチライターという職業に焦点を当てたお仕事小説。
中核となるのはもちろん言葉。そして、それをどう届けようかと奮闘する一連の流れ。
思いを文字に、言葉にするまでの苦悩をなんとなく分かるなあとなったのは、私も表現者の端くれだからだと思う。
すらすらと文字にできる時もあれば、「これだ!」と思う一言が出てこなくてずっと手が止まってしまうこともある。
この言い回しじゃないよなあ~みたいな。
それこそ言葉に出来ないけれど、何か違う感じが抜けない時がある。
いやもう考えてもどうにもならない時は、そのまま公開しちゃうこともありますが笑
でも、ここまで悩んで悩んでするのは、やっぱり自分の感じたことを伝えたいから。
自己満足かもしれないけれど、それで分かる!と思ってくれる人がいればとても嬉しい。
真逆の考えを持つ人でも、その世界を知れたらもっと嬉しい。
「わかってないのねぇ。言葉はメッセージカードのようなものよ」
一枚一枚に、自分の思いを書き付ける。とっておくもよし、日々眺めるのもよし。必要がなくなれば、破って燃やしてもいい。死ぬまでずっと、心にしまっておいてもいい。
でも、誰かの目に、耳に触れれば、なおいいだろう。誰かに伝えられれば、なおすばらしいだろう。思いを共有できることもあるかもしれない。心と心を響き合わせることもできるかもしれない。
「本日は、お日柄もよく」p22
そんな風に、文字だけでも繋がれる世界があるなら、それはとても素敵なことだと思うのです。
変化の先に、私がいるか
先程、この小説は言葉を扱うお仕事に対して主人公たちが奮闘するお話と書きました。
それともう一つ、変化の物語であるとも思っていて。
主人公のこと葉が、安定した職場を退職してまでスピーチライターのお仕事をしようとしたこと。
こと葉の幼なじみである厚志が、父の信念を継いで政治の世界に足を踏み入れることも。
行動を起こすことだったり、物事への向き合い方だったり、心情だったり。
得るものもあれば、もちろん失うものもある。
そういった、能動的・受動的な変化を愛おしく感じさせるお話、という印象。
そして、何かが変化するときに重視するのは、その先に私がいるのかということ。
その描き方がとてもリアルで的確だった。
人間は、自分がそこに属せるのかどうかということに誰しも敏感だと思う。
帰属意識、コミュニティ……何かの一員になっていることで少なからず安心感を得られる生き物。
だからこそ、「一緒に」とか「私たち」と呼びかけられると嬉しい。
何かが変わる時、その先にあなたも含まれているのだと言われると、とても心が揺らぐ。
彼は聴衆に呼びかけた。「Yes , we can」と。
ヒラリーがその演説で「I」と言い続けたのに対し、オバマは「We」と言い、すべてのスピーチを通して決してそれを忘れなかった。
聴衆は確かに感じ取ったのだ。「We」の中には自分も含まれているのだと。
「本日は、お日柄もよく」p225
ここからは舞台のお話(余談)になるのですが、そういえば、1789では「武器を持ち、立ち上がれシトワイヤン!」と呼びかけていた。
そして、レ・ミゼラブルでは「立つのだ仲間よ、世界に自由を!!」なんだよな、などと思ったり。
終わりに
言葉を扱っている小説だけあって、本当に登場人物たちか喋る一言一言がどれも良すぎる。
本当はたくさん紹介したかったのですが、全部書いていると文字数が凄いことになりそうだったので、自重しました。
1番好きなのは……実は、「静」のシーンなのですよね。
何気ない言葉にも、すべて意味が詰まっているのだと教えてくれる作品でした。
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