2024年2月11日、大阪オリックス劇場でミュージカル「イザボー」を観劇してきました。
「フランス最悪の王妃」というキャッチコピーで宣伝されていたこちらの演目ですが、実際観劇してみると良い意味で期待を裏切られ続けました。
これは、ゲネプロ映像や舞台映像があの少しのシーンしか出回っていなかったのも納得です。
あれ以上出してしまうと、パンフレットに書かれていた「観客の予想を裏切る」というのが出来なくなってしまいますものね。
以下より、ネタバレありの感想になります。
どうぞ!
登場人物
イザボー・ド・バヴィエール | 望海風斗 | フランスを滅ぼしたと言われる王妃 |
シャルル7世 | 甲斐翔真 | フランス・ヴァロワ朝第5代国王 |
ヨランド・ダラゴン | 那須 凛 | シャルル7世の義母 |
ブルゴーニュ公フィリップ | 石井一孝 | 前々王シャルル5世の弟 |
ジャン | 中河内雅貴 | フィリップの息子 |
シャルル6世 | 上原理生 | 狂気王。イザボーの夫 |
オルレアン公ルイ | 上川一哉 | シャルル6世の弟 |

小鳥から獣になった王妃
イザボーとシャルル6世、冒頭は癒やしの存在だったのに時が進むにつれてどんどん苦しくなってきます。
お互いへの愛は本物なのに、どうしてこんな事にならなければいけなかったのだろう。
しかもシャルル6世もずっと理性を手放して狂っているわけではなく、ときどき正気を取り戻しては心からイザボーを愛していることが分かるから余計に辛い。
シャルル6世がいっそ、相手をイザボーだと認識して暴力をふるってきていたのなら情けなどかけずに見捨てることも出来たかもしれない。(時代的に難しいかもしれないけれど。)
だけど彼は周りにいるのが誰かわからない状態、イザボーをイザボーと認識していない状態だから、それは見捨てられないよね。
それでも暴力はいけないけれど、事の発端が預言者の「あなたを裏切る者がいる」の発言だったので、ある意味自己防衛だったのかなとも思う。
知らない人が自分の部屋にいて親しく振る舞ってきていると考えたら、確かにそれは怖いな。
こんな状態の夫を見て、イザボーが代わりにフランスを守ろうと決意する場面、私はここが一番好きでした。
「夫を養生させて、少しでも良くなってもらおう」ではなく、「あなたと同じところまで、喜んで堕ちていきましょう」なの、並の覚悟では出来ない行為だもの。
症状が良くならない、むしろ悪化の一途を辿っている夫だけれど、彼への愛は揺るがない。
なら自分はどうするべきか。
そして導き出した答えが、「夫が愛し治めたフランスを、どんな手を使っても守り抜いてみせる」だったのは格好良すぎる。
どの男性と関係を持ったとしても、根底にあるのはシャルル6世への愛。
だからこそ、オルレアン公ルイが暗殺されたときのヴァレンチーナからの「貴女も彼(ルイ)を愛していたのでしょう?」という問いに対して答えなかったのかな、と思っているのだけど。
結果だけ見てしまえば、結局彼女の望みは叶わなかった。
イングランドとの戦争もあったでしょうが、何よりフランス国内でも派閥争いや権力争いばかりで、分断されきっていたんですよね。
「彼女は時代の波にのまれ、私は時代の波に乗った」
冒頭のヨランドのこの言葉がとても印象に残っていて。
本当にその通りだったのだと思う。やること成すこと、全て上手く行っていないように見えたもの。
でも最後に、「こんなフランスなら、ない方がマシ!」で結んだトロワ条約は周囲から見ればぶっ飛んでいるように感じるけれど、彼女の中では完全に筋が通っているんですよね。
彼女が守ろうとした「夫が愛したフランス」はもう無くなってしまったのだから。
それがどうなろうと、彼女の知ったことではない。
イザボーにとってフランスは、祖国でもなんでもないわけですし。
シャルル6世が最後に望んだように、どう言われようと彼女は生き続けたのがまた、時代に翻弄されながらも愛に生きた人だったのかな、と思わせてくれました。
これはミュージカルだということを忘れてはいけないのですが、歴史を学ぶとき、いや私たちの生活においても、一つの視点から見ているだけでは全体像も本質も見えてこないのだということを言い聞かせていきたいですね。
彼女が涙を流した日
シャルル6世の代わりにフランスを守ろうとイザボーが決意したあの日、同時に彼女はどんな絶望の中に立たされたとしても絶対に涙は流さずに笑ってみせるとも誓いを立てていました。
その言葉の通り、彼女は利用できるものは全て利用してきた。
国庫、敵対する派閥……民衆の血がたくさん流れ批判を浴びようとも、疫病が流行し国がボロボロになっていたとしても決して泣かなかった。
例え、最愛の夫が自分を忘れ暴力を振るってきたとしても。
そんな彼女が唯一涙を流したのが、実質の末息子であるシャルル7世に向かって「貴方の父親は国王ではない」と言い放ち、彼が「貴女の口から聞きたくはなかった」とその場を立ち去ったときでした。
本当にこれ、口からでた言葉というのは絶対に取り消すことが出来ないんだよなあ、と思わされたところです。
イザボーは彼女自身の目的を果たすために、何かを利用したり、嘘を吐いたりすることになれすぎていたんだろうなあと。
本当のところはイザボー自身にも分からないし、もしその通りだったとしても、そうでなかったとしても(愛する息子には変わりないから)どちらでもいいというのが本心だったのに。
自分が線引きをして、その手のひらに持ったままにしたいと思ったものを、彼女は自分自身の行動と発言で指の間から零してしまった。
シャルル7世がフランス国王へとなった戴冠式の日、彼の去り際に振り絞るような声で「即位おめでとうございます」の言葉をかけたのは、あのとき自ら手放してしまったものを、今更と思いつつ少しでも取り戻したかったのかな。
だってシャルル7世は、例え父親がだれであろうと彼女自身の可愛い子供であることは間違いないのだからね。
幕間にて
あのさあ、幕間で泣かせにかかるのずるくないですか?
最初は上演前にもあった注意喚起の第2弾(?)のようなものなのかな、と思ったんですけど。
いや、実際途中までそんなノリだったのですが。
あれが国王兄弟のおそらく昔のお話なのかと思うと、現実をみてその落差に落ち込んでしまう。
とても仲良し兄弟じゃん、あの二人。
お兄ちゃんは少しぽやっとしてて(あれ?それってただの理生さんじゃない?)、弟は少し突っかかりながらも兄を尊敬している。
なんでこの状況が続かなかったんだろうね……。
ルイは最期、「自分が欲しかった王位を継いだ兄をあざ笑うために」イザボーを兄から奪い取ってやりたかったと言っていた。
あんなに仲良さそうにしていたのに、心の中ではそんなことを思っていたの?
権力は、血の繋がった兄弟の仲まで引き裂いてしまうものなのだと思うと、本当に恐ろしい。
……いや、引き裂かれてはいないか。
あの昔のやりとりを見てしまったら、純度100%でそう思っていたわけではなさそうなんですよね。
嘲笑うというのは少し言い過ぎで、実際はちょっと揶揄うくらいのつもりだったのではないかなと、私はそう思いたいです。
その他感想
他感じたことなどを箇条書きで書いていきます。
・うーん。全体的にやはり歌詞は詰め込みすぎな気もしますね。時代背景は本当についていくのに必死になった。
・リトルイザボーとジャンヌダルク、同じ方が演じられてて、苦しいけど良い演出だなと思った。(というかイザボーの娘役もされてて凄かったです)
・でも、ジャンヌダルク自体はそこまで出番なくても良かったのではないかな?とは思う。
・暗殺組(ルイとジャン)、とてもオーバーキルすぎないか。
・フィリップもジャンもルイも、皆フランスを良くしたいという気持ちはあるはずなのに、自分との利害関係や権力が絡んでくると途端に複雑になる。
・あのタンゴのシーン、とてつもなく好きなのですが。
・理生さんが踊れているのも衝撃だったけど、上川さんは流石四季出身だけあるし、中河内さんとの踊りは圧巻の一言。
・最後この世界に啖呵きって幕を下ろすイザボー凄すぎる。
・全ての栄華も富も愛も希望も……そして絶望すらも彼女のもの、だった。
・「どうかお前の手で私を殺してくれ」、気持ちは分かるけれどイザボーにとっては酷な願いだよ。
・シャルル7世、狂気王と言われていても彼が父親かもしれないと思って喜んでしまうところ、素直で可愛いですね。
・ペストのくだり、あれはずっとああいう感じのシーンだったの?
・あの中で一番策略家で恐ろしい人物、実はヨランドだと思っている。
・カーテンコールが可愛すぎます。みんな花びらかけあってていいな。
おわりに
そういえば今回、劇場に入った瞬間からあのメインテーマ(?)をずっと流してくれていて、それだけでもテンションがあがりました。
100年戦争はとても有名な出来事ですが、イザボーという人物は全然知らなかったので、今回また新しい世界を知れてよかったです。
本当は、今度開催されるフィリップとシャルル6世……あ、石井さん上原さんのコンサートも行きたかったのですが、丁度繁忙期で予定が組み込めず。
行く方のレポを楽しみにしています。
それでは、また!
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