【観劇記録】ザ・ミュージック・マン-重ねた嘘が創り出したある街の奇跡のお話

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感想

日生劇場60周年記念イヤーの幕開けを飾るこちらの公演を見てきました。

楽しくてハッピーでたまにほろっとしてそして、少しの唐突展開があるミュージカルの王道!といった作品です。

あのですね、正直期待以上でした。

坂本くんが出演する舞台を見るのはTOP HATぶり。久しぶりに舞台の上で輝く彼が見られて嬉しい。

藤岡くんとの共演も楽しみだったのですが、絡みはあまりなく……次に期待していますね。

この先、ネタバレありの感想になりますので、これから観劇される方はご注意ください。

それから、すごく楽しいミュージカルでそういう感想もたくさん出てきますが、詐欺はダメです笑

余談ですが、V6のオタクは無条件に「6」という字に反応してしまうものだと思っていて、今回の60周年の舞台に彼が出演するのも運命を感じてしまいました。

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登場人物

ハロルド・ヒル坂本昌行マーチングバンドの先生のフリをした詐欺師
マリアン・パルー花乃まりあ図書館の司書、ピアノ教師
マーセラス・ウォッシュバーン小田井涼平ハロルドの昔の仲間
チャーリー・カウエル藤岡正明セールスマン。商売を邪魔するハロルドを嫌う
トミー・ジラス山﨑大輝街の「ごろつき」。ザニータの恋人
ザニータ・シン水嶋凛市長の娘。トミーの恋人
ジョージ・シン六角精児リバーシティの市長
ユーレイリー・マッケクニー・シン森公美子市長夫人
ミセス・パルー剣幸マリアンの母親

自分の行動が思いがけず誰かを助けることもある

登場人物紹介や、ストーリー紹介で主人公のハロルド・ヒルは詐欺師だと何回も見ていて、それを十分知った上で観劇をするのに、いつの間にか彼の虜になってしまう。

なんだかそんな不思議な体験を客席でしていました。

途中で何度もハロルドは詐欺師だというのを忘れちゃうんですよね。

おしゃべり上手でその気にさせるのがうまい。

彼と関わると誰もが笑顔になる。

……本当に、詐欺師でなくても普通に生きられそうなのになあと思うくらいに彼は魅力的です。

ハロルドは劇中、最後捕まるまで嘘をつき続けます。

でも最後の瞬間、それは嘘じゃなくなる。

ハロルドを敬愛するトミーが子供たちを集めて本当にマーチングバンドを作り上げ、衣装を身にまとい、楽器を手に行進してくる。

これは皆を騙すためだとしても、ハロルド自身が作り上げてきた街の人たちとのつながりが起こした奇跡だと思っています。

ハロルドは確実にリバーシティの人たちを変化させた。

ある人はそのままの自分を認めてくれた。ある人は話し方が人と違っても何も言わずに普通に接してくれた。またある人はやりたいことへ一歩踏み出す勇気をくれた。

「騙される」というよりも「魔法にかけられる」という言葉が合っていると感じるくらい街の雰囲気は明るくなった。

騙すつもりでとってきたハロルドの行動が、皆の心を開かせ、そして皆があそこまで自分を信じてくれているのを見て、今度はハロルドが心を動かされる。

とても素敵な循環だと思います。

ただ、シン市長の街を守ろうとしていた気持ちが本物なのは忘れてはいけない。

ただ少し厳しくしすぎてしまっただけ。厳しすぎても人々は離れていくし、自由すぎても無法地帯と化してしまう。

上に立つ人間というのは常に苦しいのだろうな。

今後のハロルドについて思いを馳せる

先ほども書いたように、観劇中はハロルドが詐欺師であることも頭から抜けてただただ楽しいハッピーミュージカルだと思っていました。

最後、町の人もハロルドのことを完全にではないにしろ受け入れてくれたし、トミーのおかげで本当にマーチングバンドを結成できた。

これでめでたしめでたし……考えれば考えるほど、私にはそうは思えなくなったんですよね。

描かれているのはリバーシティでの出来事だけなので、私たちが得られる情報はそれしかないけれど、いままでハロルドが立ち寄ってきた街ではどうでしょう。

他の街がリバーシティと同じようにハッピーになっているとは限らない。

同じような手口で騙されてお金を失った人たちがいる。もしかしたらそれで家庭が壊れたところもあるかもしれない。

そして業者側にとっても「セールスマン」と聴いただけで話しすら取り合ってくれないということをチャーリーは言っていました。

舞台としての幕引きは、あれで完璧でした。

ですが物語のその先、ハロルドがやってきたことは決して小さくはないこと、きちんと罪を償うべきだというところまで私たちは考えないといけない。

ハッピーなだけじゃなくて、結構考えさせられる演目だなあと思いました。

最後に本当の気持ちを受け入れたマリアン

こういう古き良きミュージカルっていつも「急に恋に落ちるな~」って思ってしまっていたのですが、今回のマリアンに関しては確かに急でしたけどすごく納得のいく恋の始まり方でしたね。

ハロルドのことを最初から怪しいと思っていて、更には早い段階で詐欺師という正体についても見破っていたマリアン。

でもハロルドは、マリアンが気にしないフリをしていた、婦人会の方々が囁く彼女自身への悪い噂も全く気にしない。

彼と踊っていると楽しい。悩みを全て忘れて本来の自分を引き出してくれる。

そしてなにより、「さ行」がうまく発音出来なくて引っ込み思案になってしまった弟にも対等に接してくれた。そして元の元気な弟に戻してくれた。

「あなたは、それ以上に大切なものを与えてくれたわ。だからここに来たの」

自分の気持ちを受け入れた彼女は、今までの葛藤が嘘のようにまっすぐにハロルドを見つめていたのが印象的でした。

ツイッターにも書きましたが、方向性こそ全く違いますが、メリーポピンズのパラレルワールドに感じられたんですよね。

あれも、メリーが不思議な体験を起こしてバンクス家を中心とした街の人たちを変えていく話じゃないですか?

ミュージック・マンもハロルドの嘘が皆を明るい方向へ導いていくお話だと思ったんです。

そして先ほどのマリアンの言葉が、銀行をクビになるかもしれないと落ち込むジョージに「でも、本当に大切なものは残るでしょう?子供たちと、それから貴方と私」と優しく語りかけるウィニフレッドの言葉と重なってしまったんですよね。

善悪を抜きにして、大切なものを自分に与えてくれたハロルドはマリアンにとってただの「詐欺師」ではなくなってしまっていた。

前述したとおり、その人を信じる心はまた別の人を動かす力を持つ。嘘みたいだけど本当の話になっているからこそ、心に響くんだろうなあ。

それにしても覚悟を決めた瞬間、マリアンめちゃくちゃ大胆になるやん……!とびっくりしてしまいました。

ハロルドが詐欺師だとわかる証拠資料を本人に渡しながら、「貴方にあげるわ、私の心と一緒に」とか言うから、かっこよすぎて私が惚れてしまうかと思った。

花乃さん、はじめましてだったのですがとっても可愛らしい方でめちゃくちゃ綺麗なソプラノで好きになってしまいますね、あれは……。

剣幸さん演じるマリアンの母とのやりとりも、家族って、母親ってあんな感じだよなあと思いながらとても温かい気持ちになりました。

その他感想

チャーリー、歌がない……!

今回、坂本君と藤岡君が敵対した役で共演するということで、とっても楽しみにしていたのですが。

まさかの藤岡君が歌わないという……!

レミゼラブルの「対決」ばりの歌での応酬を楽しみにしていたのですが。(それはいいすぎ)

でも、ああいう柄の悪い役をやらせると本当にうまいなあと思います。

坂本君がスマートに街の人たちを騙していくから余計にそう感じますし、街の人たちの視点で見ると本当にどっちが悪い人なのかわからないですよアレ。

なんだか見ていて色んな意味で面白かったですね笑

それにしても、劇中ずっと爽やかだったハロルドが唯一殴った相手がチャーリーなのもよい。

彼は言葉遣いとか、対応の仕方とかもっとちゃんとすればそれこそハロルドを捕まえることもできたと思うんだけどな。

何かを始めようとする人を笑う権利なんて誰にもない

これもチャーリーのお話です。

最後、トミーが引き連れてきたマーチングバンドがハロルドの指揮で演奏を始めるのですが、まあ、お世辞にもうまいとは言えない出来なんですよね。

もちろん、ハロルド自身も指揮なんてしたことがないから感性のまま指揮棒を振っている状態です。

これを広場の端の方から眺めていたチャーリーは笑い出します。

もう爆笑しているんですよね。

チャーリーは、ハロルドに対しては貶してもいいし、殴ってもかまわない。

それが正しいかどうかはまた別の話だけど、そうされても仕方ないくらいのことをハロルドはしてきている。

でも、彼に街の人たちを笑う権利なんて存在しない。

マーチングバンドをきっかけに変わろうとしている子供たちを、なにかに真剣に取り組んでいる人たちを笑って一蹴する権利は誰にもない。

どれだけ正論を言ったとしてもそれをしてしまった途端、相手にとっては悪者になってしまうんだよ。

今思えば、騙すためとはいえハロルドは街の人たちを否定するようなことは一切言ってないんですよね。

たとえ下手だとしても、みんなで楽しくやっている彼ら彼女らはおそらく失敗を繰り返しながら成長していくと思う。

ひたむきに取り組んでいる子供たちが本当に眩しく見えて仕方がなかったなあ。

なんだか、「テニスって、楽しいじゃん!」って言っていた某王子様が浮かんできたシーンでした。

役者もオーケストラもこの盛大な魔法の仕掛人

このミュージカルが面白いなあと思ったのは、もう本当に最初からです。

オーケストラの指揮者が劇中でハロルドが身に付けるあの帽子をかぶるところからスタートします。

その瞬間に私たちはこれからハロルドが作り上げるマーチングバンドの観客になってしまっているんですよね。

そして劇中はリバーシティの人たちが成長する姿を見て、最後はカーテンコールでマーチングバンドの完成形を見届ける。

もうなんだか親になった気分ですよ。

大人はもちろん子役たちもめちゃくちゃダンスがうまいのね。

色んなところに仕掛けが施されていて、役者をはじめとしてスタッフさんやオーケストラの方全てに魔法をかけられている、そんな気分を味わえてとにかく楽しかったです。

最後に

「明日明日を続けていたら、何もない昨日が積み上がるだけだ。俺は今を楽しく生きていたい」

この言葉が刺さったのはきっと私だけではないと思う。

何かをしようと思ったとき、言い訳を考えて先延ばしにしてしまうのが人間だけど、一歩を踏み出す覚悟を持てるのもまた人間。

規則や制限の多い世の中ではあるけど将来過去を振り返ったときに「やりきった!」と思える毎日を過ごしていたいなあと思う。

たまには、だらだらするのも許してくださいね笑

そういえば、アフタートークで坂本君のターンが綺麗というお話が出たそうなんですが、そうですよね!!!!

ジャニーズの中でもあそこらへんのレッスンがある時代を過ごした人たちは凄く綺麗なバレエ系のターンをするイメージがあります。

そして観劇した後はお酒を飲んだり美味しいものを食べたりしながら、公演を思い返すのが大好きなので、今回も食べたものを載せて終わりにします。

おしまい!

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