2024年4月7日、ミュージカル「ひめゆり」を観劇してきました。
沖縄は大学時代のゼミ旅行で訪れて、そのときにひめゆりの塔や平和記念資料館にも行きました。
周りには海や自然があり、こんな綺麗な場所が、当時は地獄と化していたんだろうなあと、感じた記憶があります。
私を含め戦争を経験していない世代が増えいくからこそ、語っていかなければいけないお話なのだと思います。
以下、ネタバレありの感想になります。
どうぞ!
キャスト
真実を知るということ
最初、何が衝撃だったかというと、戦場(病院)に向かうように言われた少女達がとても無垢で純粋だったこと。
まだ学生だった彼女達はきっと未来を夢見る力もあっただろうし、戦況は良好と軍が伝えていることもあって「小さいことだとしてもお役に立てることがあるなら!」と戦地へ向かって行った。
もちろん、行かない選択をすれば非国民と言われる状況がそうさせた、というのもあるのだろうけれど。
だけどいざ病院に辿り着くと、年若い少女達が見るにはかなりきついであろう戦争の現実がそこにはあって。
衛生の欠片もない。薬も食事も足りない。血を流し、傷口に虫を湧かせ、痛みを訴える数多くの兵士たち。
まさに地獄のような。
凄いなと思ったのは、最初は怯えて泣き叫んでいた彼女達の顔つきがどんどん変わっていったこと。
もちろん、そうならざるを得ない環境だったのは間違いないですが、それでも最初は兵士たちから逃げていた少女達が彼らと向き合い、なんとか励まそうとしている姿が眩しく見えました。
眩しく……うーん、なんか違うね。
眩しさと同時に、悲惨さも感じたというか。色々複雑な気持ちになってしまったのですよね、彼女達の表情の変化を見て。
もし戦争なんてなかったら、歌にあったように、彼女達は学校帰りにお菓子を食べて笑い合ったり、大きくなって恋をして、素敵な誰かと結婚して子供を育てて……そして年老いて死ぬという未来もあったはずなんですよね。
もちろん、これは日本だけではない。
戦勝国、敗戦国に限らず戦争に関わった国の人間はみんな地獄のような毎日を生きてきたのだと思う。
普通にあるべきだった命がたくさん失われた。その事実をどこの国もこうして後世に伝えていってくれているだろうになあ。
まだ全然、平和にはほど遠い世の中なのが現実なんですよね。
上原婦長
実は今回、上原婦長役の沼尾みゆきさんを凄く楽しみにしていました。
おそらく、劇団四季「ウィキッド」の再演のお話がなければ知らないままだったかもしれません。(お恥ずかしい話ですが。)
舞台上には、本当に白い服を着た天使がいました。
どんな状況でも常に笑顔を絶やさず、兵士達を励まし続けた。
兵士達だけじゃない。突然現場に送られて、その悲惨さにパニックになる学徒たちのことも包み込み、元気づけ、愛した。
上原婦長について印象に残っている場所は2つあって。
一つは「夢を見ましょう」のシーン。ここは、先生たちとの対比が好きでもあるのだけど。
「敵を殺せ」と教えてきた先生達が学徒たちにに謝ったあと、この歌になるのですが、先生も婦長も、子供達に思っていることは実は同じなんですよね。
「人生は豊かだと知って欲しい」「あなたたちには、未来がある」
で、学徒の一人が「夢は先生になりたい」って言うじゃないですか。
あの言葉に、先生達はきっと救われたと思うんですよね。
あの絶望的な状況のなかでも婦長は皆に希望を持たせようとしたし、その結果先生達も笑顔になる……まではならないけれど、少し気持ちを落ち着かせる事ができていた。
上原婦長の本当の気持ちがどうであれ、彼女は彼女の役割を果たし続けた。
そしてもう一つ印象深かったのが、最後、銃の引き金を引く場面。
私はそう来ると思っていなくて、ずっとキミと滝軍曹ばかり追いかけていたのでこのときの婦長の表情を見れていないんですよね。
数多くの兵士の命を救ってきたその手で、命を救うために他の命を奪ったその覚悟を見届けたかった。
ここ、実は先ほどの先生とのシーンと合わせて考えるととても重い意味を持っているような気がする。
婦長が滝軍曹を撃った銃は、先生から「何かあったときは、お願いします」と渡されたものだったから。
先生が最期に願った「人生は豊かだと知って欲しい」という思いを背負って、あの銃弾を放ったのかと思うと、とても苦しくなってしまう。
もし次回、タイミングが合ってまた見に行けたら。
このシーンは絶対に見逃しません。
その他感想
チャプターにするには短い感想を書いていきます。
・自力で家まで辿り着いたあの姉妹、途中で殺されると思っていたから本当によかった。母親の姿を見て、すっごく嬉しそうにするお姉ちゃん。妹の手前、いろいろ我慢していたんだろうなあ。
・「どう死のうか?」と間にはさまれる3人は、笑ってはいけないんだけど、なんというか、少し和みを与えてくれる3人だった。1人じゃなく、2人でもなく。3人だったからこそ、切り抜けられたような、そんな感じ。
・唯一予習していった「小鳥の歌」。最初聞いたときは辛いなあくらいの感想だったのに、そこにお芝居が重なると驚くほどいろんな感情が沸き起こってきて何も考えられなかった。
・「治療した兵士は、また戦場へ送り出されてしまう」病院の最大の矛盾だよね。命を救われた人たちは、また命をかけて戦場で戦う。
・動けない人は置いて行くじゃなくて、知らないうちに命を絶たれるの苦しい。
・学徒達をかばって撃たれた兵士。学徒達がちゃんと兵士に向かい合ってきたことが表われていているんだよねえ、ここ。
・檜山の独白は……きつい。生きていく事の方が地獄なの。
おわりに
そう言えば、冒頭で書いたゼミ旅行で「ガマ」にも入ったことを思い出しました。
狭くて暗くて、中に何がいるか分からない。
私が入ったところはまだ入り口付近で、太陽の光も届いたところでしたが、きっと当時の人たちはかなり奥まで入っただろうし、そうじゃなくても爆煙であかりなんて届かなかったのではないかな。
正直言うと、怖い記憶しか残っていないので、また改めて行けたら良いなあと思います。
それでは!
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